箸を持った若旦那は「この香りが目鼻につーんと来るところが何とも言えない贅沢」と吐き気を抑えながら腐った豆腐を口に入れました。江戸っ子から「これは何という食べ物ですか」と聞かれると、「これは珍しい酢豆腐といいやす」と若旦那は答えました。
「そんなに妙味ならもっと召し上がってください。」と勧めましたが、「これは一口に限るものでげす。私のような通が食べれば酢豆腐と言うが、あなた方が食べればただの腐った豆腐でゲス」と答えましたとさ。
目黒のさんま
秋の日、ある殿様が馬で目黒まで遠出をしました。元気を持て余した殿様は家来と山まで競争しますが、すっかりお腹を空かせてしまします。弁当の準備をしていない家来はすっかり困ってしまいます。そうこうしているうちにさんまを焼く匂いが漂てきました。
殿様が「この匂いは何であるか」と問われました。家来は「さんまの匂いでございます。」と答えましたが、上等な魚しか食べたことのない殿様はさんまなど知りません。家来は「下魚にございまして、お口に合わないと存じます」と説明します。が、空腹に耐えかえた殿様はさんまを持ってくるように命じました。
